[放送大学]正多面体と素数(’21) 勉強法と単位取得のコツ
はじめに
この記事は前回の続きです。 是非こちらもお読みください。
章ごとの勉強方法
まず、本講義は大きく分けると、以下のようになっています。
章 | 内容 |
---|---|
1 | 正多面体の性質 |
2-5 | 群論 |
6-7 | 行列 |
8 | 射影 |
9-10 | 多項式 |
11-15 | 体 |
1章 正多面体の性質
ここは高校数学の知識で乗り切れると思います。
復習をしつつ、なんとかついていってください。
2-5章 群論
私は、 5章までの群論の基礎をどれだけ固められているか が、本講義を受講する上でのポイントだと感じています。
一つのマイルストーンとしては、5章の最後に出てくる 準同型定理とは何をするためのものなのか ということを、きちんと説明できることかなと思います。
次の、ヨビノリさんの代数学講座が、本当におすすめです。 私は正直この講座がなければ、単位をとれなかったと思います。
もし2-5章の印刷教材、放送授業を見て勉強したうえでついていけなければ、こちらの動画の内容をマスターすることをお勧めします。
第1回で挙げられている、群論を学ぶ理由として「元と元の演算の結果の、入れ替わりの形・構造を考える」というというのを意識・理解できるだけでも、群論を学ぶ意味・モチベーションが全く違ってきます。
強いて言うと、第5回で挙げられている同値関係が、実例がなくわかりにくいかもしれません。
例えば、関係~を、三角形の相似として考えると、以下のようになります。
こうみると、結構当たり前のことを言ってるな?と感じるかもしれません。
関係 | 三角形の関係 |
---|---|
反射律: a ~ a | 三角形Aと三角形Aは相似(同じものなので) |
対称律: a ~ b ならば b ~ a | 三角形Aと三角形Bが相似なら、三角形Bと三角形Aが相似 |
推移律: a ~ b かつ b ∼ c ならば a ∼ c | 三角形Aと三角形B、三角形Bと三角形Cが相似なら、 三角形Bと三角形Cが相似 |
是非ノートを取りながら、通して見てほしいと思います。
6-7章 行列
5章までの知識が固められていれば、行列の知識があれば、6-7章は乗り切れると思います。
シラバスには 「入門線型代数('19)」を履修していることが望ましい。 と記載がありますが、可能なら、上位の 線型代数学('17) も履修しておくと、より理解が深まると思います。
8章 射影
- 2次元のものを1次元にどう落とし込むか
- 3次元のものを2次元にどう落とし込むか
ということを考えていきます。
図を書いてみると理解が深まると思います。
最後は、点に対する正多面体群の作用を考えていきます。
9-10章 多項式
, , はそれぞれ頂点の集合、辺の中点の集合、面の中心の集合ですが、
- 頂点(点)は0次元だから
- 辺は1次元だから
- 面は2次元だから
と覚えると良いです。
11-15章 体
あとはここを乗り切れれば勝ちです。
環と体について
まずざっくりですが、以下を覚えましょう
- 今までは 群 という、 1つの演算が成り立つ世界 を考えていた
- これからは、 環 という、 和と積2つの演算が成り立つ世界 を考える
- 環のなかでさらに、以下の条件を満たすものを 体 と呼ぶ
- 乗法の単位元1(≠0)を持つ
- 1でない任意の元が単元(環Aの元で、となる元が存在する = 乗法の逆元が存在する)
- なお、環Aのなかで、単元全体をで表す。
- つまり0は含まない
体の拡大と剰余環
体の拡大と剰余環の関係が、ぱっと見わかりにくいので、次の例を考えます。
- 複素数はに同型である
例えば、複素数の世界では、以下の計算が成り立ちます。
次に、は、を係数とする多項式全体です。
その多項式を、を解に持つで割った余りの世界を考えます。
2次式で割るので、余りは1次式となります。
ここで以下の計算を考えます。
で割った余りの世界を考えているので、割ってみます
ここでをとすると、となり、の解である複素数を添加した世界に一致します。
以下のページが参考になります
有限体の計算
最後に試験対策として、有限体同士の演算に慣れておきましょう。
例えば有限体とは、の世界で、の世界では解けない方程式(既約多項式)を使用して、以下を考えます。
の世界では解けない方程式(既約多項式)とは、には、の世界の住人であるのなかには、代入してとなる解がない。ということです。(複素数の世界なら解が存在します。)
あとは、以下の手順で演算ができます。
- の多項式として普通に計算する
- で割って余りを出す
- それぞれの項に対してを考える
例えば以下のようになります。
以下のページが参考になります。
有限体の性質・計算について理解を深めてもらえればと思います。
最後に
もしこの説明が、理解の手助けとなれば幸いです。
ただ、通信指導・正直単位認定試験は、正直どこから何が出るか、全くわかりません。
通信指導は、前回も書きましたが、わからないことがあったら質問箱を活用しましょう。
単位認定試験は、高校幾何を復習したうえで、印刷教材の各章末問題にちゃんと完答できるまで勉強すれば、試験でぼろぼろになるということはない……と思います。
単位を取れてみれば大変ためになる講義ではありましたが、非常に苦しかったのも事実です。
私は、再試験の勉強中、たまたま知り合いが代数学(群論)の専門家であったことを知り、最終的には頼らなかったものの「いつでも聞ける人がいる」というのが心の大きな支えになり、なんとか最後までやり遂げることができました。
手放しでは勧められませんが、数学に自信のある方、チャレンジしたい方は、是非頑張ってください。応援しています。