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[放送大学]数学科目受講で挫折しない5つのヒント

はじめに

この記事では、現役エンジニアが放送大学で2年間、数学学習を戦った際の「こういうことを知っておきたかった」「こうすればもっと楽だった」という知見を残したものになります。

プロフィール

現役のシステム(ソフトウェア)エンジニアをやっています。
高校では数学が割と好きなほうで、数III+Cまで学習しました。
卒業後大学にはいかず、IT関連ではない別の仕事に就きました。
就業しながら、AI・機械学習が面白そう!やってみたい!と思い本を開きましたが、高校卒業程度の数学力では太刀打ちできず、悲しみにくれました。
しかし、人生思い立った時がスタートの精神で、2020年1学期に思いきって放送大学 自然と環境コースに全科履修生として入学し、数学の学習を開始しました。

2021年2学期までの4期で、最終的に以下の科目の単位を取得しました。

5つのコツ

1. 「入門」とつく授業に気を付ける

「入門」と聞くと、どういうイメージを持たれるでしょうか。
おそらく大多数の方は「簡単」「優しい」「初心者歓迎」みたいな印象を持たれると思います。

放送大学では、その認識を改めてください。
放送大学での「入門」の意味は 「高校範囲を理解した上での、大学レベルの中ではでは入門・導入レベルの授業」 と捉えるといいと思います。普通に難しいです。

実際に、入門微分積分・入門線型代数は、高校時代に数学が得意だった私も苦労しました。
インターネットにも、困ってらっしゃる方がいました。

「入門」科目を受講する時は、まずそれ以前の高校の範囲がしっかり理解・復習できているかを一度自分に問いかけてから受講することをお勧めします。
ちなみにこれは、その他の物理や化学等の授業にも当てはまります。

2. 授業の進度が早いという認識を持つ

私は放送大学入学前「大学数学といっても、高校時代数学は得意だったし、通信制の大学だし(?謎の理屈)、何とかなるだろう。」という気分でいました。それが、授業を受けはじめて一変しました。

まず、放送授業のスピードが早いです。
放送大学の放送授業は45分となっており、最初は「90分の半分で済むなんてラッキー」と思っていましたが、その分2倍の速さで進むため、休憩なしのノンストップで、最初から最後まで早口で授業が進行します。
常に集中している必要があり、頭を休める暇がなく、かなり精神力を消耗します。
(ちなみに授業時間が半分でよいのは、放送教材と印刷教材それぞれ45分かけて勉強し、それぞれについて、90分の予習復習をすることを前提としているためです。)

また、カリキュラムとして、他の大学に比べると、かなり早いものになっています。
具体的に言うと、他の大学で2単位×2学期で、計4単位かけるような内容を、2単位の1科目に押し込んでいるケースが見受けられます。

つまり、通常の倍のスピードで、倍の密度のカリキュラムが組まれているため、最高で普通の授業に比べて4倍ものスピードで授業が進行します。
特に後半の難易度が上がったパートは、教科書を読みながら1本放送を見るだけでも、相当疲れると思います。

速いなと思ったら、半分のタイミングで休憩をとったり、もっと言うと1つの授業を2回にわけてもよいと思います。

3. 大学教授は教えるプロではない

基本的には、放送大学の教授陣はレベルが高いですし、放送授業・印刷教材も工夫が凝らされていると思います。
しかしながら、一部の授業で、がんばって理解してから「もっとこう言ってくれたら伝わりやすかったのにな……?」ということがありました。

フォローとしては、どうしても長くその業界にいると、自分が初学者の頃を忘れ(もしくは、初学者を一瞬で通り越してしまった天才タイプだったか)、躓くポイントがわからず、自分の目線で話をされてしまう、ということがあると思います(実際、エンジニア業界にもそういう方は見受けられます)。
また、放送大学の特性上、本当の初学者の方から、大学卒業後さらに探求心で通われている方まで、層が大変広いことから、受講生ごとのレベルにかなりの差があり、どこをターゲットにするか、という悩みもあるのかと思います。

なので、授業がわからなくても、あまり自分を責めすぎずにいてもらえたらと思います。

4. 「数学的成熟度」という考え方について知っておく

授業がわからないという点では、特に最初のころ私もかなり悩んでいた時期があったのですが、以下の、アメリカの大学の数学教授の動画が大変参考になりました。

www.youtube.com

要約すると以下のような内容です。

  • 日本の大学数学ではカリキュラム上の問題がある
  • 高校卒業時点の数学のレベル(数学的成熟度)では、微分の最初に学ぶε-Δ法や、線形代数は難しい。
    • ドラクエで例えると、その時点のレベルで立ち向かえるボスではない。つまり、ゲームバランスが崩壊してしまっている。
    • これらは理解するのに「知識」は必要としないが「数学脳の強さ」を必要とする。
  • 多変数関数の微積微分方程式など、計算中心のものを初年度に学んでから、次に進むことをお勧めする
    • 実際にアメリカのカリキュラムではそうなっている

実際に私も、入門微分積分の最初でε-N論法が出てきて、あまりにわからなくて3日間寝込みました。
当時はこれを知らず「入門なのに最初からついていけない……。」と、凄くショックを受けていたのを覚えています。

なので、例えば入門微分積分の最初で詰まってしまっても、めげずに、そのあとの計算中心パートを進めて見るのもよいと思います。
最後まで終えて、立ち返ってみれば、数学脳が鍛えられ、理解できるかもしれません。

数学的成熟度についてさらに詳しく知りたい方は、以下の動画を参考にされてください。

数学者としてのレベルを図る尺度は「数学的成熟度」。Mathematical Maturity, MM - YouTube

また、以下の数学の学び方の動画も大変参考になります。併せてご確認下さい。

大学レベルでの数学の教科書を読む際の注意点。 - YouTube

数学の教科書の読み進め方。大学レベルの数学の教科書を独学で読み進めるには? - YouTube

5. 仲間を見つける

最後はこれに尽きるかもしれません。

私は入学してから2学期目に、感染症がちょうど落ち着くか落ち着かないかのギリギリのタイミングで、オンサイトで行われる面接授業に出席することができました。
その授業では最初に各受講者から出席を兼ねて自己紹介の時間がとられており、そこで、年代や方向性が近そうな人がいたので、勇気を出して話しかけてみました。
話しかけてみると、実は歳は離れていましたが、入学の期は一緒で、受講している授業も非常に近いものでした。
何かの縁かと思い、連絡先を教えてもらいました。

その後、その方とはたまにではありますが「放送大学大変だよね」とか「あの授業難しすぎない!?」とか、そういう何気ない意識の共有ができることが、相当助かりました。
放送大学は一人一人の好きなペースで受講できる分、モチベーションの維持や、壁にぶつかった時の対処が難しい印象です。
一般の大学では当たり前にできるであろう、同じ時期に同じ学科に入学して同じような授業を取る友人(知り合いでも)がおらず、教えあったりとか、飲み会で愚痴を吐いたりとか、そういう普通のことの難易度が、ものすごく高いからです。

特に私が一番落ち込んだのが、落ちる人がいないといわれている通信指導に落ちた時です。「授業が理解できず通信指導に落ちるなんて、世界で自分だけなのではないか」なんて自身を責めたりしました。
しかし、前述したその方に連絡すると、実はその人も、同じ教授が担当していた別の授業で通信指導に落ちた経験があったことを知り「ああ……、自分だけではなかったんだな。あの通信指導の出題内容は理不尽だよな。」と、自分自身に全て責任があるわけではない、と知り救われました。

現在は、感染状況は一進一退で、なかなかオンサイトでの面接授業というのはないかもしれません。
しかし、もしタイミングがあれば(相手に迷惑のかからない範囲で)話せる人を作ってみてください。
また、今だとTwitter放送大学関連のタグを使用・検索することで、方向性の近い人が見つかるかもしれません。そういったツールも是非活用してみてください。

おわりに

以上、この記事から、何か1つでも学習のヒントが見つかれば幸いです。

落ちる人がいないといわれている通信指導に落ちた時の話はこちら

beppy.hatenablog.com